帚木蓬生さんの「閉鎖病棟」

閉鎖病棟 (新潮文庫)

閉鎖病棟 (新潮文庫)

去年の暮れに東京駅構内の書店に平積みしてあった。
「今年読みたかったミステリー第1位」とか何とかいう札がついていた。
横山秀夫ファンのワタシは「震度0(ゼロ)」が文庫本で出た矢先でまよわずそちらを買って帰ったな〜と思い出す。
アマゾンで矢口敦子さんの本を探していて、読者絶賛のこの本に再度出会い迷わず購入した。
「ミステリー」ではなく「ヒューマン」
登場人物の一人一人がきちんと優しいまなざしと淡々とした口調で書かれている。
後半以降に登場する主治医の患者への接し方とか、病棟主任の思いがけない言葉とか、裁判所での弁護人からのいたわりの言葉とか、裁判長から特別に被告人への言葉かけを許される場面とか。
カタカナの「チュウ」さんが「塚本中弥」という顔を取り戻していく過程とか。
それらの全てが人への尊厳に満ちていて、温かい涙がゆっくりこぼれていく不思議な読後感の小説。