映画『おとうと』 透明感のある蒼井優チャンと、限りなく普通がイイ加瀬亮サン

女手一つで娘を育ててきた姉(吉永小百合サン)と、大阪で芸人にあこがれながら破天荒な暮らしを送る弟(笑福亭鶴瓶サン)。
二人の再開と別れを描く家族ドラマ。監督は山田洋次サン。


姉弟(きょうだい)』の形を、その時々の心の動きを、お互いの家族の中での立場とか、思いを温かく描いている。
愛情深い姉(吉永小百合サン)が、とても穏やかで綺麗でした。
どうしようもなく、けったいな弟(笑福亭鶴瓶サン)が最後には憎めないおじさんに見えてきました。
この二人だからこそ描きだせた家族愛だと思いました。


商店街の人たち(笹野高史サン、森本レオサン)の、下町ならではの人間愛も描かれていてほのぼのとした。
小春(蒼井優チャン)を通しての結婚観とか、夫婦のありかたとか、夫婦だけでは解決できない(価値観とかお互いの家族とか)事とか。
本当に大切なものは何か。
温かく心に浸透して、初めから終わりまでほろほろ泣き続けた。いや、途中はもう誰もいなかったら号泣したかった。
亨(加瀬亮サン)の「バツイチは小春の人格には何も関係ない」は、すごい決め台詞。
どこまでもナチュラルな加瀬サンが、魅力ある「普通」を演じる加瀬サンがリアルな日常を感じさせてくれました。
蒼井優チャンの透明感も、女手一つで育ちながらも心やさしい小春になくてはならないものでした。


弟が最期を迎える「みどりの家」の小日向文世サンと石田ゆり子サン夫婦が、温かかった。
ホスピスとか介護とか、ここでも何が本当に大切かを考えさせられた。
狭いけれど家自体が人間愛に包まれていて、人間もまんざら悪くはないねと思えた。


市川崑監督に捧ぐ― とあった。
私は、今の時代の『おとうと』にめぐり合えたことに感謝したい。