湊かなえサン『夜行観覧車』 家族のことは家族にしか解らないという究極

夜行観覧車

夜行観覧車

綺麗事とか、一時の感情を削ぎ落した生身の家族の姿が描かれている。
今まさに灯っている明かりの下の「家族」を切り取ってきたような日常そのもの。
感動のシーンがあってなお、過剰に美化されず淡々としたリアルを描ききっている。
とても不思議な「湊ワールド」に引き込まれて『告白』同様に、一気に読み切ってしまった。


映画『告白』主演の松たかこサンのコメント――
息もつかせぬ展開の連続だった。
家族が摩擦をおこしながら、それでも家族でありつづける姿は、胸が痛むほど美しい。
家々に灯るあかり、それは希望そのものだ。


映画『告白』の原作者・湊かなえサンのトークショーでの、「家族を描くために「ミステリー」というジャンルが一番伝えられると思った」とのコメント。
事件の「何故?」は、そのまま家族の「何故?」となっていて、遠藤家と高橋家で視点を変えながら明かされていく。
小島家というスパイスをふりかけながら。


個人的には、高橋家の長男「良幸」が(一度は逃げたいと思った)人間臭さをもちつつ聡明で大きな人間だったのが良かったかな。
起こった事実のかけらを拾い集めて、全力で家族を守ろうとする姿に、捻じ曲げられた結末も許せる気がした。
まっ、ミステリーだからだけどね-ω-