矢口敦子さん 『あれから』 温かい思いで胸がいっぱいになった
- 作者: 矢口敦子
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2009/03/01
- メディア: 単行本
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姉妹は偶然出会った大学生たちの力を借りて、父の汚名を晴らそうとする。
[現在]看護師として働く千幸の前に、いまわしい過去の人が現れる。
そして明らかになっていく悲しい真実・・
ほんの短い第一章[現在]で、私の心は鷲づかみにされる。
不器用な男友達と千幸の再開とその後。
過去と現在を繰り返しながら明らかになっていく真実。
またしても、最後まで読まないと終われない――小説に捕まってしまう。
いや、捕まりたくて表紙をめくるのだけれど――
これから読まれる方は、時間のたっぷりある時をお勧めします。
線路に転落して亡くなった大学生の妹(瑞恵)と千幸の会話。
「お互い、つらい過去なんか、ぐじゃぐじゃしゃべりあう必要はないわ。若いんだもの。未来に視線を向けるべきよ」
シチュエーションを異にして二度語られる言葉。
最初は瑞恵から千幸に向けて。二度目は千幸から瑞恵に向けて。
心の色と重なって深いグラディエーションを描いた。
明日からの糧となるような温かい色合いで。
そして最後まで不器用だけれど誠実な「男友達」に涙した。